Hugo Wolf ヴォルフ
An eine Äolsharfe アイオロスの竪琴に寄す
Eduard Mörike メーリケ Tu semper urges flebilibus modis
嘆きの調べにのせて歌うは
Mysten ademptum: nec tibi Vespero
失いしミュステスのことのみ
Surgente decedunt amores,
宵の明星現れし折も、昇る太陽に追われて星の消ゆる時も
Nec rapidum fugiente Solem.
汝が心に思いの果てることなし
Horaz ホラチウス
Angelehnt an die Efeuwand この古びたテラスの
Dieser alten Terrasse,蔦這う壁に寄りかかり、
Du, einer luftgebor'nen Muse汝、そよ風が生んだミューズよ、
Geheimnisvolles Saitenspiel,神秘的な弦の音よ、
Fang' an,奏でておくれ、
Fange wieder an 再び奏でておくれ、
Deine melodische Klage!汝が美しき嘆きの調べを!
Ihr kommet, Winde, fern herüber,遠くから吹き寄せる風、
Ach! von des Knaben,ああ、私がこよなく愛した
Der mir so lieb war,あの少年の眠る
Frischgrünendem Hügel.新緑萌える丘から風が吹く。
Und Frühlingsblüten unterwegs streifend,道すがら春の花々に触れ、
Übersättigt mit Wohlgerüchen,芳香に満ち溢れ、
Wie süß, wie süß bedrängt ihr dies Herz!なんと甘く、なんと甘くこの胸を悩ますのか!
Und säuselt her in die Saiten,そして竪琴にそよぎ入る、
Angezogen von wohllautender Wehmut,美しい憂いの響きに魅せられ、
Wachsend im Zug meiner Sehnsucht,私の憧れは一気に高まり
Und hinsterbend wieder.また消えてゆく。
Aber auf einmal,しかし突然、
Wieder Wind heftiger herstößt,再び風がひと際強く吹き、
Ein holder Schrei der Harfe竪琴の柔らかな悲鳴は
Wiederholt mir zu süßem Erschrecken私に甘美な驚愕を呼び戻し
Meiner Seele plötzliche Regung,私の魂を不意に揺さぶる
Und hier, die volle Rose streut geschütteltそして満開のバラが揺すられ
All' ihre Blätter vor meine Füße!花びらは残らずこの私の足元に撒き散らされる。
前回「ヴァイラの歌」がハープを模した伴奏だったので、ハープつながりで曲を選びました。
「アイオロス」はギリシャ神話の風の神様。「アイオロスの竪琴」とはエオリアンハープの事で、風に触れてひとりでに鳴るハープです。
詩の冒頭に掲載されているのは、メーリケの好きだったローマの詩人。アイオロスが失った恋人ミュステスを嘆いているうた。
第2節に登場する「あの少年」はメーリケの弟だそうです。
ヴォルフの曲はとても幻想的で特に、第3節は突然の強風にハープがかき鳴らされて昂る気持が素晴らしく描かれています。同じ詩にブラームスも曲をつけていてとても素敵な作品ですが、ヴォルフに比べると踏み込みが足りないですね。
Wolf
Brahms