今日は神楽坂の音友ホールでちょこっとだけ伴奏。
曲は
平井康三郎作曲、北原白秋詩 「日本の笛」より5曲
~「祭りもどり」・「親船小船」・「あの子この子」・「ぬしは牛飼」・「びいでびいで」
1.祭りもどり 祭りもどりに
お月さんにはぐれ
あたしゃ お母ちゃん
恋の闇
お祭りは男女の出会いと睦み合い

の場。お月さんが雲に隠れた隙に人気のないところに二人で来ちゃって、嗚呼おかあちゃん、どうしよう、もう止められないこの胸の高ぶり
3.親船小船 沖の大船
ありゃ 親船よ
見やれ ゆさりとも
帆は揺れぬ
おいら 子伝馬(こでんま)
まだ親がかり
いろのろの字の
櫓も持たぬ
「子伝馬」は親船と岸を行き来する小船のこと。「いろのろの字~」は色事の「ろ」の字も知らない若造、「ろ」と「櫓」をかけてます。
「船に乗る」というのは「女に乗る」(あっさり読みすごしてくださいね!)みたいな意味もありまして、ま、そういう風にも解釈できるかな・・・と。
5.あの子この子 あの子もとうとう 死んだそな
嫁取り前じゃに なんだんべ
蕪(かぶら)畑にゃ鰯がはねる
お墓まいりでもしてやろか
この子もとうとうおっ死んだ
嫁入り前だに なんだんべ
花は馬鈴薯(じゃがいも) うす紫よ
鉦(かね)でも叩いて行きましょか
どの子もどの子も なんだんべ
色事ひとつも知んねえでな
小芋はどっさり 殖えたによ
かわいそうだよ まったく なあよ
村の若者の死を嘆く老人の歌。
第1連の「蕪畑にゃ鰯がはねる」というのは、畑に肥料としてまいた獲れすぎた鰯がピンピン跳ねているのを見て、あんな風に元気な若者だったのに・・・という意味らしいです。
第2連は花盛りを迎えた娘のこと、第3連は畑にはたくさん小芋ができたのに、お前たちは「いろのろの字」も知らん若さで死んじまうのかい・・・という無念を歌っています。
7.ぬしは牛飼い
ぬしは牛飼い
笛吹き上手
いつも横眼に
見て通る
見やれ 水甕(みずがめ)
黄八丈(きはちじょう)の羽織
わたしゃ 頭も
濡らしゃせぬ
先の「祭りもどり」とこの「ぬしは牛飼い」は、白秋が八丈島で生活した中から生まれた詩。
「ぬし」とは「あなた」の意で、牛飼いのきみ、上手に笛吹いて私たちが水汲みしてる所を通るけど、いつも横眼でちらりと見てるでしょ!?でもそんな笛と流し眼なんかで、水を満たした甕を運ぶ頭も、私の心も濡れやしないわ!
8.びいでびいで びいでびいでの
今 花盛り
紅いかんざし
暁(あけ)の霧
びいでびいでの
あの花かげで
なんとお仰った(おしゃった)
末(すえ)かけた
こちらは小笠原の風景。「びいでびいで」はブーゲンビリアの事で、「亜熱帯に咲く燃えるような紅い花で、木の梢に房状につくはなが島娘の花かんざしのように美しい」と作曲者が注記をつけています。
「暁の霧」とあるからには夜明けの頃に何かがあったのでしょう。その時あの花かげであなたはなんと仰いましたっけ・・・末は夫婦と誓ったわよね・・・
終わってしまったけど思い出すほどに甘い恋の想いが、とても愛らしいメロディーで書かれています。
今日は5曲でしたが全部で21曲あります。
小唄、狂言、追分節・・・日本情緒あふれるとても楽しい曲集です。
お聴きになりたい方はこちらのCDをお勧めいたします!
平井康三郎歌曲集~日本の笛~ TRK-108~9 2枚組 全50曲 税込5,000円 vo 関 定子・pf 塚田佳男後にも先にもこれ以上の演奏はないでしょう